透明性
スクラムは、問題を解決したり、生産性が高いチームを作れる魔法のプロセスではありません。プロセスですらありません。
スクラムは、短いフィードバックループで透明性を格段に高めるフレームワークです。
スクラムは、チームがプロダクト開発においてどれだけ良い成果を出せているかの鏡として作用し、チームや組織の問題を明らかにします。
この可視性は、 チーム、PO、組織に継続的な改善を促す「検査-適応サイクル」と共に、経験的プロセス管理を支えます。
LeSSの原理原則 待ち行列理論 の中に、
バッチサイズと周期を小さくすることによる間接的な利益についての説明があります。
出荷可能なプロダクトを得るために、バッチサイズ、周期、WIPレベルを意図的に小さくすることは、より透明性を高め、組織の隠れた弱点を明らかにします。
透明性なしに、適応や舵取りを行うことは困難です。
透明性があれば、適応の制御と改善が可能になります。
この事実は良いニュースです。
他方悪いニュースは、「現実は厳しい」という事実です。
透明性は、時に不快で、時には脅威ですらあります。適応を難しくしたり、政治色濃いものにしたりもします。
以前は、人や、グループや、プロセスや、ツールや、環境や、場所、—果ては組織全体のデザインやマネジメントにまつわる問題は、軽度であれ深刻であれ、あまり明確に見ることは出来ませんでした。
LeSSの導入により、これら痛みを伴う透明性が得られます。
痛みを伴う透明性の存在は、単一チームのスクラムや、大規模なスクラムが、現状に近いものに変換され、現在の弱点が隠されたままにされたり、回避されてしまったりする理由の一つとなります。
あるいは、スクラムやLeSSが無視または排除され、現状の穏便なやり方に置き換えられたりします。
Ken Schwaber—スクラムの共同発明者—は、かつて、「Scrumを採用することに対する4つの障害」を要約しました。
これは、スクラムやLeSSが組織に導入される際の、「痛みを伴う透明性」の政治的意義も示しています。
4つの障害:
- ウォーターフォールの暴政
- 統制と支配の幻想
- 魔術的な信仰
- 不透明性の時代
透明性は、Doneの定義にも大きく関係します。
Doneの意味を正式に定義すると、タスクがDoneかUndoneか曖昧になったり、Undoneのままになったりする可能性を減らし、
進捗(Doneか、Undoneか)を明確に測定できるようになるため、透明性が向上します。
不完全なDoneの定義の存在は、システムに Undoneワークが存在することを意味します。Undoneワークも、透明性の欠如を引き起こします。リスクはUndoneワークの中に隠さるのです。
例えば、もし性能テストがUndoneの場合、性能問題の露呈をリリースの直前–最悪のタイミング–まで遅らせることになりかねません。